20191024 宮沢和史@大阪フェスティバルホール

この記事では宮沢和史さんの歌手デビュー30周年記念コンサート「あれから」の10/24大阪公演の内容をセットリスト、MCなどのネタバレを含めて書いています。

曲順やパフォーマンス、MCの内容やニュアンスについては僕の記憶をもとにフンワリと思い出して書いてます。事実と異なっていたり、そもそもご本人の真意等と異なった書き方をしている恐れもあります。

 

<メンバー>

伊藤直樹(Dr)
町田昌弘(Gt)
鬼武みゆき(Pf)
tatsu(Bass)
ルイス・バジェ(Tp)
土屋玲子(Vn)
今福健司(Perc
大城クラウディア(Cho)

公式ページよりコピー&ペースト。以上、敬称略。
昨年からの"時を泳げ魚の如く"ツアーでも活躍され、BOOMERにも馴染みの深い伊藤さん、町田さん。そして同ツアーから参加いただき、今年リリースされた新譜"留まらざること川の如く"にも参加されたピアノ・鬼武さん。後半5人は2016年のラストライブの印象も色褪せないGANGA ZUMBAメンバー。いわばTHE BOOM勢とガンガ勢のコラボバンドというわけですね!

 

<ライブ本編>

17:30開場18:30開演、21:45頃終演。

3時間超、休憩なし、宮沢さんは終始立ちっぱなしのステージ。

 

万雷の拍手を受けながらメンバーが現れ、歓声を受けながら宮沢さんも登場。伊藤さんの"サラタカタカタカ……"というドラムロールからの1曲目は"なし"。場内大歓声、手拍子!! 勢いもそのままに2曲目は"都市バス"!! 中盤「Jump! Jump! Jump!!」からはあのジャンプも復活。久々に腰をひねり跳ねるMIYAさんを観ました。

 

「まさか自分に30周年が来るなんて思ってもいませんでした」

挨拶がてらMCを挟み、町田さんがストラトからES-335に持ち替えての3曲目"帰ろうかな"。TAKASHI君さんの十八番でもあるスライドギターを再現し、カラッと雰囲気を変えます。
ギターソロ的な後奏が終わるや否や、今度は今福さんのパーカッションに伊藤さんの応戦。(あ、これはTHE BOOMの15周年ライブでもやっていた、あの!!)と曲名が思い出るより早く入ってきたtatsuさんのウッドベース。4曲目"Human Rush"! 裏打ち変拍子なんのその、身体を揺らして手拍子打つことがこんなに楽しいなんて。

5曲目にはライブでは皆勤に近い頻度で演奏され、ブラジル期を語るに外せない"Tokyo Love"。頭から往年のファンの皆様方をニヤリとさせたであろう裏ベスト的な流れ。

 

「初めてジャマイカの空港に飛行機で降りた時。それは夜だったんですけれど、街の夜景が綺麗で……蛍光灯の光じゃなくて、白熱灯の暖かい光なんですね。"ああ、これは神様の宝石でできた島みたいだ"と思いました……翌日歩くと、そうでもなかったけど笑」
6曲目は"神様の宝石でできた島"。
今回のライブではルイスさんがバンマスとして参加しているのもあってか、THE BOOM期の曲には所々00年代ツアー時のアレンジがかかっていて、僕にできるすべてツアー~15周年ライブの頃にファンになった僕としては感激でした。

 

「30周年のライブを祝ってくれる人達が来てくれました」

最初に呼び込まれたのは、HYから新里英之さんと仲宗根泉さん。やや強引なフリ笑からの7曲目"風になりたい"、そしてHYのトリビュート盤で宮沢さんが参加された8曲目"帰る場所"。そもそものHYというグループ名がメンバー達の出身である うるま市の"東屋慶名(ひがしやけな(Higashi-Yakena)"という地名から来ていることも初耳。客席から「かわいいなー」と声の上がるまったりした雰囲気、歌声。近々CDをレンタルしようと思います。

続いて呼び込まれたのは津軽三味線上妻宏光さん。渋く和装で来られるかと思いきや、カジュアルに白いパンツでの登場。初めて上妻さんから共演を持ち掛けた場所が男二人で話し合うに似つかないメルヘンな喫茶店だったというフランクな話題から始まり、9曲目は二人の共作"みだれ桜"。続いて上妻さんのアルバムでもカバーされた10曲目"いいあんべえ"。津軽三味線と沖縄三線によるギターバトルならぬ"線バトル(?)"も楽しめました。
二人で並んだ際、三味線の方が三線より棹(ネック)が長く立派に見えることに宮沢さんは「こっち(三線)の方が先に中国から伝わって来たんですから、こっちが兄貴なんです。次男の方が大きく育てられるっていうこと、ありますよね?笑」と。

 

上妻さんが去った後、HYさん達とのMCでも触れていた"メッセージ性のある歌"について。
ハイサイおじさんは明るい曲調でヒットしたけれど、本当は戦後の状況を歌っていました。僕もTHE BOOMGANGA ZUMBA宮沢和史ソロで、その時代をスケッチするような歌も作ってきました」
それから95年に沖縄の方から「3000人の三線奏者がコラボするイベントの曲を書いてほしい」と依頼をうけ、「内地の人間が作ってもいいのか」と迷いながら背中を押されて作ったという11曲目"太陽アカラ波キララ"。THE BOOMのライブではよく歌われた一曲、こうしてソロライブで聴くのも新鮮です。

ゲストを呼び込んで以降、益々盛り上がりの止まない会場に「どうぞ座って……身体を休めて」と笑いかけた宮沢さんは三線をギターに持ち替え、新譜"留まらざること川の如く""から3曲を披露。

12.Paper Plane
13.亜壇の心
14.歌ったことのない歌

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個人的な話。2015年末のMUSICKツアーあたりから、宮沢さんのライブでは「家で聴き馴染んでいたスタジオ音源よりも、今聴いているこの演奏の方がずっと完成されている!!」と感動する機会が増えて来ました。今回の新譜からの曲達も、(あ、今目の前で演奏されている音楽こそ、あの歌たちの一つの完成系なんだ)と驚き嬉しくなりました。特に"亜壇の心"は原曲に無かったルイスさんのラテンなノリが相乗し、CD音源以上に気持ちよくノれました。やっぱり「今が一番カッコいい」人なんだな、と。

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3人目のゲストはKiroroより、玉城千春さん。宮沢さんが沖縄で「三線の棹に使う黒木(くるち)の木を植樹して増やそう」と始めた"くるちの杜プロジェクト"の植樹場所がご近所とのこと。
二人で新造ユニット"Keroro"として、Kiroroの"長い間"(15曲目)、そして16曲目、宮沢さんから提案されたという"二人のハーモニー"。初めて生で聴けました。


3組のゲストとの和やかな共演が終わり、宮沢さんから30周年に対するMC。改めて、一度マイクを置いた自分に30周年が来るなんて思っていなかったこと。
そして、これまでのことについて。

「今までは自分のやりたいことを追求するあまり、傷つけてしまったり、迷惑をかけてしまったこともたくさんありました。でも、自分に嘘をつくことなく、一点の曇りもなく歩いてくることが出来ました」

THE BOOMのメンバー、スタッフには感謝しています。勿論、去ってしまった人、今は仕事を一緒にしていない人達もいます。今こうしてもう一度歌い出したことで新しいスタッフの人達がついてくれました。PA、照明、コンサートスタッフ。そして、僕たちのためにこの日を空けてくれたフェスティバルホール。本当に、ありがとうございました」

(この前後のMCは多くのことを語っていらしたので、僕の書き起こしの記憶など曖昧で、一部ご本人の意図と異なる表現になってしまっているかもしれません。ただ、この日、ここまで朗らかにステージを進めてきた宮沢さんが一転辛そうに、時に声を詰まらせながら「迷惑をかけてしまった」という表現をしていたのがとても意外で、なんとか触れておきたくて書き起こしてみました)


会場中が静かに宮沢さんを見つめる中。始まった17曲目は"時がたてば"。

"あの空高く 僕は飛んでみたいと言った
かわりばえのしない 生活を君は愛した"

"明日になれば 二人の目には
違う景色が 朝日を浴びて 輝くだろう"

THE BOOM解散前のベスト盤"25 PEACETIME BOOM"のブックレットでは「4人によるアンサンブルを大切にして録音された曲」と紹介されています。このタイミングでこの曲が来るとは全く予想出来ず、よくよく聴けば町田さんのギター、tatsuさんのベースライン、伊藤さんのドラミングは(当たり前ながら)オリジナルの3人のフレーズを丁寧に再現していて、じわじわじわじわ来ました。


この後のMCあたりで宮沢さんの活動休止のきっかけの一つとなったヘルニアに触れながら、以前にも、喘息で2回入院していたことも明かしていました。「心配をかけるようなことは出来るだけ言いたくなかった」と。

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本当に今更ながらですが、20数年間、THE BOOMのフロントマン、そして主なソングライターとして音楽を作り言葉を書き、それを作品としてリリースし、多くのファンや応援してくれている人達から求められることに応え、時に失望され、それでも逃げることなく、自分のやりたいこと・描きたいと思う世界に挑んでいくことが、どれだけ大変な道のりであったかと思い知りました。
昨年末に京都で観たライブでも「今までは、歌の中の人物像を求められることが時に辛いと思うことがあった」とコメントしていましたが、病気と闘いながら、24時間365日、THE BOOMのMIYAとして表舞台に立ち続けることのプレッシャーも相当にあったのだろうと思いました。脱線が続き、すみません。
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"かつて僕たちを拾ってくれて、レコードも出させてくれた"プロデューサーや、一緒に幾つもの名曲をプロデュースしてくれた朝本さん達、もう会えなくなった方々の話題に触れつつ。
「残された人生、自分らしく。また迷惑をかけるかもしれないけれど」
「また新しい歌を作ったら、歌いに来ます」

(本当にここのMCは改めて聞き返したいので、このライブのパッケージ化を強く望みます)


「じゃあ後半戦いきましょうか!」

キリっとした表情の宮沢さん、ワーッと立ち上がる客席をみて。
「あれ、どうしたんですか?」
「次の曲、雪虫ですよ? ルティカですよ? ……晩年ですよ?」
このやりとり、古参のBOOMER諸兄の皆さまは大爆笑で、改めて会場の雰囲気が緩まり、暖まりました。

 

18.HABATAKE!
19.Mambolero
20.DISCOTIQUE

ここからはGANGA ZUMBA期の楽曲がガツンと続きます。腰をくねらせ踊る宮沢サンを観て、ガンガ結成時のドキュメンタリーで「暗い時代だから、皆で一緒に歌うおうという歌が増えて来た。それもいいけれど、だからこそ肩を組んで"じゃあ一緒に踊ろうぜ!"というバンドでありたい」と語っていたことを思い出しました。会場皆で踊る! 踊る!! 踊る!!!
"HATABATKE!"では会場中にあのコーラスが響き渡り、"Mambolero"では玲子先生が最前に乗り出してきてソロを弾きまくり、DISCOTIQUEではクライディアさんのグイグイくるコーラスがやっぱり素敵!! 熱狂、という言葉に相応しいひと時でした。

 

あっという間に3曲が終わり、宮沢さんが再びアコースティックギターを提げます。

「プロの音楽家になりたくて東京に出て来ると、みんな中央線沿いに住むんですね。それは、いつでも電車一本で(故郷に)帰れるから。僕が初めて住んだコーポの大家の息子が悪い奴で、ヤンキーのたまり場で(中略)……ああ、帰って友達のあいつらとまた会いたいな、というのと、どうしてもプロのミュージシャンになりたい、という気持ちで揺れていました」

(ここで僕は"中央線"を歌うんだ、と思っていました)

 

「あの頃、中央線の……なんというんでしょう。線路を跨いだ高架の上でずーっと、この歌のフレーズを口ずさんでいました」

「久しぶりに歌います。"Take it easy"」
会場が息を呑む音が、本当に聞こえました。

町田さんによるディレイのかかったイントロや爆発的なギターソロ、伊藤さんとtatsuさんのリズム、後半から存在を主張しながら飛び込んでくるルイスさんと玲子先生のメロディとバッキング。
15周年ライブを(DVDで)観たり、2011年の"光"ツアーで聴いたりした時は"THE BOOMの4人が初めてスタジオに入ってやった曲"として、神聖なものとして演奏されてきた曲。僕は今の宮沢さんがこの歌を歌ってくれて、何かの踏ん切りが改めてついたような気持になりました。そんなめんどくさい理屈ぬきに、本当にいい歌。

 

歓声も止まらない中、ラスト22曲目は"不思議なパワー"。昨年末の京都では1曲目にギター1本の弾き語りで歌っていたこの曲が今日このタイミングで宮沢さんが信頼をおいてやまない仲間達と共に奏でられ、僕は一人、また新たな感動に震えていました。ギターソロでは町田さんがステージ最前まで来てピョンピョン跳ねてました。

 

アンコールではゲスト4人を呼びこんで、いよいよの"島唄"。

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また個人的な話。"島唄"はライブ中でも置き所の難しい曲だと思っていました。宮沢さんが書いた当初の想い以上に曲の持つメッセージ、またこの歌に求められることが大きくなりすぎて、THE BOOMの、そして宮沢さんのライブのセットリストのどこに来ても"どこか浮いてしまう"印象がありました。THE BOOMの解散ライブでは1曲目、昨年末の京都では休憩前、第一部のラストに入れられていたことからも、勝手にそんな印象を受けていました。

それが何故かこの日はいつもより落ち着いて、メッセージ以上にひとつの音楽として楽しく聴くことが出来ました。それは玉城さんのコーラスだったり、間奏の上妻さんの三味線ソロだったり、もしくは沖縄流の煽りを入れて盛り立ててくれたHY ヒデさんのお陰か、はたまたこの歌も含めてずーーっと一緒に宮沢さんの音楽を愛でて聴いてきた会場中のファンの皆様の暖かい雰囲気のためでしょうか。何故か分からないけれど、穏やかで、でも「やっぱり本物だ!!」と初めてこの歌をライブで聴けた時のような感動でニコニコしていました。
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「もう1曲やろう」と宮沢さん。
「これは仲間達という意味の言葉です。最後にもう一度だけ、この会場の皆で一つになれたらと思います」とはじまったのは"シンカヌチャー"。THE BOOMのラストアルバム"世界で一番美しい島"にも収録されていましたし、活動休止前のラストライブでも演奏されていましたが、僕はこの日の大阪で観た演奏が一番好きです。両手を振り上げ声を張り上げ、ステージと会場が本当に一つになった感覚がありました。

 

盛大なアンコールも終わり、ステージ上も舞台上も照明がカーっと照らされました。
カーテンコールのようにメンバー全員で挨拶をして捌けていく中、宮沢さんは最後の最後まで客席に向かって頭を下げ、もう一度マイクを手に取りました。

「感謝の意味をこめて、もう1曲だけ歌わせてください……鬼武さん、鬼武さんいますか?」
急遽、という形で鬼武さん一人をピアノに呼び戻し。会場の照明は全部ついたまま、ステージと客席がお互いに見つめ合うような形に。

 

「この曲は人に書いたものですけれど、このツアーでこれを歌うべきなんじゃないかと思いました」
Kinki Kidsさん達に提供し、新譜のラストにも収録された"Next to you"。

 

"傷だらけの帰り道 泥だらけの遠い道も
手を伸ばせば届く場所に 君がいてくれた"
と歌い出すこの曲。
2014年、THE BOOMラストツアー@山梨のMCで「この後またそれぞれの道を歩いていくことになるんでしょうが、辛かったり行き詰ったり、目の前に壁があってもう前に行けないような日が来たら、俺が言ったことを思い出してみてください。僕らの選択は、ひとつも間違いじゃありませんでした」と語っていた宮沢さんを思い出して、いつもジンとくる歌でした。

"疲れたなら立ち止まろう
泣きたい日は空を仰ごう
この道がいつか途切れたとしても
一から始めればいい"


転調後、ラスト。
"振り返るのが怖くて
未来への方へ逃げ続けた
青春は君と行けば 永遠の……"

 

マイクを手に黙り込んでしまう宮沢さん。静まり返る会場。
誰も声をかけることも出来ず、しばらくした後、目元を手のひらで覆って絞り出すような声で。
「……光」


鳴りやまない拍手を受けながら、何度も何度も客席に頭を下げながらステージを去っていった宮沢さん。その後ろ姿に、休止前のラストライブの最後にも似た儚げな美しさを思い出しながら、僕は満ち足りた気持ちで会場を出て、終電に向かって駆け出しました。


<セットリスト>

()内は初めて収録されたアルバムになります。


1.なし(THE BOOM/サイレンのおひさま)
2.都市バス(THE BOOM/A PEACETIME BOOM)
3.帰ろうかな(THE BOOM/極東サンバ)
4.Human Rush(THE BOOM/極東サンバ)
5.Tokyo Love(THE BOOM/極東サンバ)
6.神様の宝石でできた島(MIYA & YAMI/LOVE IS DANGEROUS)
7.風になりたい with HY(THE BOOM/極東サンバ)
8.帰る場所 with HY
9.みだれ桜 with 上妻宏光
10.いいあんべえ with 上妻宏光(THE BOOM/FACELESS MAN)
11.太陽アカラ波キララ(THE BOOM/OKINAWA~ワタシノシマ~)
12.Paper Plane(宮沢和史/留まらざること川の如く)
13.亜壇の心(宮沢和史/留まらざること川の如く)
14.歌ったことのない歌(宮沢和史/留まらざること川の如く)
15.長い間 with 玉城千春
16.二人のハーモニー with 玉城千春 (矢野顕子&宮沢和史/Singles+)
17.時がたてば(THE BOOM/TROPICALISM-O°)
18.HABATAKE!(GANGA ZUMBA/Hatabake!)
19.Mambolero(GANGA ZUMBA/Habatake!)
20.DISCOTIQUE(GANGA ZUMBA/DISCOTIQUE)
21.Take it easy(THE BOOM/D.E.M.O.)
22.不思議なパワー(THE BOOM/A PEACETIME BOOM)
アンコール
23.島唄(THE BOOM/思春期)
24.シンカヌチャー(宮沢和史+DIAMANTES+シンカヌチャー/ST)
25.Next to you(宮沢和史/留まらざること川の如く)