20110618 THE BOOM@静岡市民文化会館

2011年、東北の震災後に始まった"光"ツアー。以前、mixiの日記に挙げたライブレポートをこちらにもあげ直してみます。余計な箇所を排し、分かりづらい箇所には加筆修正を掛けてますが、その時感じたことなどは出来るだけそのまま残しています。

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 20日(月)に地元で用事があったので、帰省がてら、18日(土)のTHE BOOMのライブを観にいくことにしました。THE BOOMのライブは、これまで過去2回参戦。

 

【2003/10/04 僕にできるすべてツアー@ラグーナ蒲郡

海をバックに組まれた野外ステージにて。バンドの後ろをヨットが行き交う風景は素敵でしたが、午後3時頃の開場? 開演? だったため、暮れ出した陽の逆光でメンバーが殆ど見えず。逆光についてはMCでも度々触れ、「眩しい男で御免なさいね」と語ってました。

後のGANGA ZUMBAを彷彿とさせる大所帯のバンド編成で、"涙そうそう"のカバーやアルバム未収録の"紙飛行機"をやってくれたり、おりこうさんメドレーでは"ズンドコ節"と"地上の星"を挟み、曲中で宮沢さんが「蒲郡は、性が乱れています」と語ったりしていたなあとか(会場のリハーサル室から、丁度若い男女が外で"まぐわっている"ところが見えたらしく、その様子をメンバー4人で見ていたらしい)、記憶は朧げ。「THE BOOMを生で観た!」ことに興奮してました。 

 

【2009/08/22 20th Anniversaryツアー@山梨県立県民文化ホール 小ホール】 

会場が一体となって歌って踊った、とても楽しかったライブ。この頃参加し出したサポ-トギタリスト・町田さんのプレイがすばらしく、前回よりロック色・エンターテイメント性の強いステージに。

同じ日に大ホールで美輪明宏さんがコンサートをやってらして、会場の「今日の催し」の掲示板を見ながら「(会場の取り合いをしたら)美輪さんには勝てないなぁ」と笑いました。

 

/今回のステージについて/ 

今回のツアーは3月末に発売された新アルバム"よっちゃばれ"を中心とした、22年目の貫禄溢れるリリースツアー……となる予定でした。

震災のためCDは秋まで発売延期、ツアーも選曲や編成などを練り直し、「今の日本に必要な歌を届けてまわる。計画停電など、いかなる事態も想定したライブを行う」ことをコンセプトにした"光"ツアーに急遽変更されました。サポートメンバーもキーボードの鶴来さん1人だけという少人数編成に。

 

/ライブレポ本編/

開演に先立って、まず舞台監督が挨拶。今回のツアーコンセプトについて、また開演中に地震が発生した際の対応、避難指示についても説明。

 

幕があがるとメンバーは全員椅子に座っていて、ギターはアコギ。ベースアンプを除いてアンプらしいものはステージ上に見えず、照明は天井から吊るされた大きいもの2つに、22個の小さな電球達。3年前と比べ、照明の演出は抑え目な印象。

アコースティック調に1曲目"20 -twenty-"が終わると、2曲目に"風になりたい"。いつもはライブのハイライトとして皆で合唱する曲が、この日はアコギ中心の弾き語りスタイルに。ステージのセッティングと相まって「ガチ」な感じもとい緊張感が漂い、「やっぱりTHE BOOMは本気でやってんだなあ」と感じ入る一方、正直「これで2時間超通すのはキツいんじゃないかなぁ」と不安にもなりました。会場もノれる曲には手拍子をするものの、以降数曲に渡っては静かな反応が続きました。

 

"朱鷺-トキ-"を歌った後のMCでは「2003年に佐渡島を訪れ、センターで保護されている朱鷺を見ました。その時の感動と、"保護された朱鷺がいつか大自然を舞うように"と願いをこめて歌を書いたら、数年して2008年に朱鷺の放鳥が始まりました。今回の震災の復興でも"あの時に戻りたいなぁ"なんて考えじゃなく、ここにいる皆さん一人一人が"こんな未来になってほしい"と願うことが大切だと思います」とコメント。 

あと、ギターは所々でエレキに持ち替えてました、アンプはステージ上になかったので、ステージ脇のアンプかワイヤレスで出してたのでしょうか。

 

「ガチ」な雰囲気のステージでは中盤、"TROPICALISM(フランス・ムルロア環礁での核実験について歌った曲)"から、「東北への皆さんの想いを、この歌に乗せて……」と"島唄"へ。15周年の折に初めて4人だけで演ったこの曲。今回もそれに次ぐ少人数での演奏。 

 

"島唄"に盛り上がった会場の拍手をうけながらメンバーが舞台袖に捌け、そのまま宮沢さん一人による弾き語りステージに。バンドと並行した個人名義での"寄り道"ツアーも度々やってきていましたが、こうしてTHE BOOMのライブ内でやってしまうのは初めて? とはいえ、バンドのリーダーであるこの人が喋りまくるにはこういう形式が一番良いんだろうなぁ、とも思いました。曲は2、3曲に絞り、MCでは震災から10日間くらい「歌えなくなった」ことや、被災地を訪れた時に知った、ニュースや映像で伝えられない「臭い」について語り(「あの臭いは一生忘れない」と)、福島県の塩屋崎灯台にまつわる美空ひばりさんの"みだれ髪"を歌いました。 

 

メンバーが戻ると、新旧交えた「歌える/踊れる」曲をバシバシ繋ぎ、クライマックスへ引っ張っていきます。 

印象に残ったのは、2003年のツアータイトルにもなった"僕にできるすべて"や、同時期に生まれた"明日からはじまる"といった曲たち。これらは同年のアルバム"百景"にまとめられたのですが、「日本全国で観てきた美しい景色、出会った色々な人々から浮かんだ」歌達が今の日本で歌われていることに感慨が。あれからわずか8年後、こんな未来が来るとは。 

 

アンコールでは「THE BOOMが結成され、初めてスタジオに入ってやった曲を」と"Take it easy"を、そのまま今年2月に石川さゆりさんと共演した"暁月夜~あかつきづくよ"と、最新のシングルも漏らさず。 

(余談ですが、僕が山梨の片隅で2011年3月11日の昼下がりに震災を迎えたのは、帰省先から東京経由で下宿先のアパートに戻って1時間もしない頃、この発売間もないシングル盤を自室のプレイヤーで聴いていた、まさにその時でした。以降、このCDはしばらく聴き返すのに勇気が要りました。このCDをかける度、何かよくないことが起きるような気がしてしまって……。閑話休題)

 

「震災以降、日本中で色んな歌が歌われ、皆がそれらの歌を共有した。誤解を招く言い方だけれど、それはとてもいいことだと思う。そして、こんな時に皆で歌える歌がたくさんあるTHE BOOMは、とても幸せだと改めて思った」と語り、1stアルバムから"不思議なパワー"。会場全員で「不思議なパワー 溢れるパワー/眠れない朝にサヨナラ/不思議なパワー 強い力/喜びは君と僕のもの」と歌いながら、その変化に富んだ音楽性と対照的に一貫したTHE BOOMのスタンスに暖かい気持ちになりました。 

 

2回目のアンコールでは「これまでは自分の音楽欲を満たしたい想いでやってきたけれど、これからの残された人生、歌を伝えていきたい」と語り、ツアータイトルになった"光"を演奏。リリース時は結婚記念日をテーマにした歌として紹介されていましたこの曲、"星も月も見えない夜は/僕が君の光になろう"というフレーズが改めてジンと沁みました。

去り際、ステージ袖で舞台監督とガッチリ握手をしていった姿が印象的でした。ああ、ライブってのはステージ上の人間だけのものじゃないんだなぁ、なんて。 

 

/雑感/ 

変則的なステージで、色々客席で考えることも多い良いライブでした。こうしてMCを文章に起こしていくと、どこか胡散臭さすら感じられます。しかし、そうした胡散臭さ-時に「うそ臭いなぁ」と思えてしまうくらいのもの-を振り払い、「ああこの人たちは本当にこういうことを言いたいんだ」と感動させる説得力が、THE BOOMのステージにはあります。そんなわけで、僕はこのライブで2時間ばかり、クソ真面目に感動しました。ほんとに行ってよかった! 

 

/演奏について/ 

今回驚いたのが「5人でもやれるんだ!」ということ。これまでの映像やライブをみるにつけ、「THE BOOMはサポートメンバーをガッツリ入れることで、彼らの音楽性を表現しているのだ」と一人納得していましたが、そんな思い込みをバッサリ切り捨てられました。音源の再現ではなく、THE BOOMの歌を表現するという意味では、5人の演奏にも全く不足を感じさせませんでした。サポートでありながら、楽曲のリードをグイグイとる鶴来さんの鍵盤がすばらしかったです。 

 

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/追記/

この時買った真っ白なツアーTシャツ、同デザインのトートバッグは当時のお気に入りでした。バンドロゴの下にメンバー4人のシルエットが遇らわれたシンプルなもの。あちこち着回し連れまわし、当時所属していたバンドサークルの卒業コンサートにも出張り、どちらも、もう、手元にはありません。